[延々と続くノックの音は、後ろから掛けられた部屋の主の声>>23で、不自然な程にピタリと止んだ。
青年は、ぎぎ、と音がしそうなぎこちない動作で首を巡らせ、食事のトレイを持ったスティーブン医師の顔を凝視する。
一秒。二秒。三秒──── ]
センセイ。なんだよ、メシの時間だったんだ。
ううん、いいよ別に、オレが勝手に待ってただけから、センセイが謝る意味が分かんねえよ。
[きっかり五秒後。能面じみた顔が唐突に相好を崩す。医師に会えたことに安堵したような表情は、少し勝気そうなごく普通の青年のもので。
まるでスイッチが切り替わるかのようなそれに、しかし医師は慣れているのか動じた風も無く、青年を部屋へと招き入れた。
青年──シーシャは、椅子ではなく診察台の方へ腰掛け、治療の為の器具を準備するスティーブンの様子を眺める。
それからちら、とデスクに置かれた湯気の立つ食器たちに視線をやって、すまなそうに眉を下げた。]
なぁ、センセイ、貸してくれたら自分でやるよ。
メシ冷めちゃうもんな。悪ィよ。
(39) 2014/08/30(Sat) 12時半頃