[イナリと名乗る狐は、青が好きだ。それはいつか昇る空の色である故に。
並べられる様々な青の瓶のひとつひとつを値踏みするように眺めて。最後に置かれた、星の浮かぶ夜空を思わせるような深い青色と、"似合うかも。"の文字に目を瞬いた。>>23]
なるほど。ソランジュは、わたくしにこれが似合うと?
……では、折角なのでこちらをいただきましょう。
[最後の瓶をす、と指さして。狐は上機嫌そうに頷くのだった。]
お代はいつものと……こちらの青はどうしましょう。
ああそうだ、最近雨が少ないですし、雨乞いでもしましょうか?
[懐からいつもの対価――水の入った小瓶を取り出す。
イナリは街の外れにある、湖のほとりに居を構えている。機関車の煤の混じらない透明な湖水を、イナリは時折取引に使う。
それから首を傾けて、冗談めかしてそう問うた。**]
(32) 2019/10/06(Sun) 02時頃