――第1棟・広間→――
[ さかなはうみでおよぐもの。
鳥がうたってやまへとぶのと同じに。
……ならひとは、と。思考は吸収缶をすり抜け、あまいにおいが鼻腔を通るうち失せていく。
――そうして訪れる人影>>16に、祈りを映すことすらない面体の奥をひくり、とさせた。長髪を下ろす彼の名は知っている。自ら、いくどか傷つけたことすらあったかもしれない。
外皮の鱗は下――足先から上へと、なで上げられれば柔い皮膚には血がにじむ。
においに錯乱すれば同胞にすら、とかちりと歯を立てては、くつわじみた面体に触れかかりつつ。
衣服に覆われてはいるものの。仮にも管理者なら理解してない訳もないだろう、と1つ、寄せられる歩に後退る。]
……ヴェスパタイン、先生。
[ いのりも“みちびき”もままならないだろう地下で。におわない花を見る様に、胸元の十字架を眺めながら。
名を呼びつつ、足下の血をグリ、と一層隠しにじる。
――何か用か、と短く投げては、いくつか交わす話もあったろうか。やがてプールへと足を進めれば、スータンの裾を見つめ。
“そのカッコじゃ、先生はおよげないだろうけど”と、小さく揶揄いを投げることすら。]
(30) 2015/07/10(Fri) 14時頃