[殆ど意識もせずに漏らした言葉を、その意味を、じわじわと頭が理解し始める。
ずっと奥底に押し込めて目をそらして見ない振りをしていた物を、
まさか自分の言葉で認識させられるとは思ってもいなかった。
感じたのは口にしてしまった後悔とかそんなのよりは、
脱力感に似た何かで、なんだか無性に気が抜けた。
首筋に当てていた手を、止められなければゆるゆると退いてく。
自然と横に逸れた視線は、伏し気味の位置で一度留まる。]
――…なんで泣いてんの?
[横目の端に僅かに映った儘だった兄の顔を、何かが零れ落ちていく>>21のが見えて。虚ろがちだった瞳に、怪訝めいた色が乗った。
涙を流させるような事を、言っただろうか。
思い当たるのは先の言葉くらいだけど、それが涙に繋がるとは到底思えない。
兄が泣く所なんて、久しいどころか記憶に残っているかすら怪しいのに。
すぐに拭われてしまったそれに向けていた視線を下げると、
半端に崩れていた体制を、背にしたシンクに凭れなおして正して。]
(27) 2014/07/04(Fri) 02時頃