[血の海に染まった一室。ぼそりぼそりと今際の台詞を吐くドナルドを、私はただ呆然と眺めることしかできなかった。彼の言葉と、サイモンの亡骸を見ればおおよそどういうことか位は理解できた。
動揺はしていたが、死はいつだって側にいたのだ。
早かれ遅かれ人は死ぬ。私たちのような子供は勿論
嫌悪する大人達だってそうだ。寿命という名の道程に果てしない差があったとしても、未来永劫の生は望めない
不老不死なる夢絵巻を語るまでもない。心が先か、身体が先か、それとも脳が先か…そんなものは些末なことだ。
万物の有象無象に関わらず、モノはいつかは死ぬのだ。
年の割に達観できる程には私も多くを経験してきた。仲間の死を直視できるくらいには死に対して“鈍く”もなっていた。
だが、この実情は…希望という仮初めのより所にすがるのなら、受け入れたくはない事象]
グレッグ、落ち着いたらでいい、事の顛末を皆に話してくれ。
それから…サイモン帰還から彼と接触した者は検査を。シメオンなら多少調べられるか?
設備は心許ないがやらないよりはいいだろう。
憂いは疑心を生む。
その芽は摘んでおきたい。
(27) 2012/04/23(Mon) 23時頃