――ッあ゛!
[噛み付かれ、血を啜られれば、わなわなと体が震えて、断続的に小さな悲鳴が洩れる。
痛みと酸欠で頭がぼんやりして、されるがままになる他無く。伸ばした腕も、柔く彼の頭を包むだけで、何の抑止力にもならないに違いない。
引き剥がそうと足を上げもするけれど、結局それすら叶わずに、振り上げたそれは宙を蹴った]
や、だ……、やめ、
[制止の言葉も満足に口に出来ず、であれば許しを乞うなんて以ての外だ。
変わらずぼろぼろと涙を流しているけれど、もうそれだけで。皮肉を言う気力も、悪態を吐く思考も、すべて取りさらわれてしまっている。
目の前がちかちかして焦点も定まらないし、絶え間なく悲鳴をあげる口元からは唾液が零れていて、それを拭う気力も無いのに。けれど間近で落とされた呟きは、何故だか聞き取る事が出来て。
――何だ、大切な物じゃあなかったのか。
そんな事を考えるけれど、勿論口に出す余裕など無かった]
(26) 製菓 2014/07/07(Mon) 10時頃