[ベネットを拘束室に送り出して、其れを見送りながら思いだす。
かつてグレイシアに嫁いだ、父方の曽祖父の妹にあたるガーランド。
子を成すことを目的とした軍略的婚姻、夫婦仲についての記述はない。
ゲイルの生命力操作は森人の血で付与される能力であり、彼女には即死無効の能力しかなかった。
だから子は成され、子の母は矢張り出産1日後に死んだ。
記録に残る一文。
それは、グレイシアの資料に残っているのかは、知らない
『うまれてきてくれて、ありがとう』
グレイシアの能力者を産み、凍える唇で子に囁かれた母親の遺言。
能力者を産んだが為に命を落とした彼女がこう言った気持ちは、未だゲイルには解らない。
ただ、もしかしたら己含む能力者は、疎まれたり利用されたりすることが多いけれど、
一番、一番初めは、純粋に望まれて生まれたのではないかと
なんとなぁく―――妄想するのだった。**]
(23) hinaki 2011/04/02(Sat) 04時頃