ふふ、勇敢ですね、アリス君は。
でもね、次に一人でお母様に会いに来るときには、先に手紙を下さい。なにせ、君は素敵なレディなんですから。
お姫様の脱走劇には、手助けをする騎士が付き物でしょう?
──よろしければ、このチャールズが御迎えに上がります。
[勿論、誰にも内緒で。
伸ばした人差し指を唇に当て、内緒話をするみたいに小さな声でアリスに提案し、微笑んでみせる。
小さなレディが納得してくれれば、塀を越えるという危険を侵させる事も無くなるだろう。──ああ、でも、騎士役はクシャミに任せた方が良かったのかもしれない。
少し思うが、それは後で考えれば良い事だろう。
冷えてしまったアリスの膝にブランケットを掛けてやり、彼女の好きな紅茶を用意する。
好みは変わっていないだろうか。 考えながら温めたカップにダージリンを注いで。
五年前。母の死に、痛ましいほどに打ちひしがれていたアリスが、今こうして元気そうに訪ねてきてくれた事が、チャールズには心から嬉しかった。**]
(20) 2013/11/20(Wed) 03時頃