[脱出をしてきましたから。どことなく得意気なアリスにチャールズはぱちりと目を丸くする。脱出。つまり、あの高い塀を越えて、一人で町までやって来たという事だろう。執事の目を盗んで。]
──ふっ、…はは、そうですか、それはそれは…!
[思わず笑いが漏れてしまう。お目付役は今頃さぞかし心配しているだろう。だが、小さなレディにとって、きっとこれはとんでもなく大それた脱走劇なのだ。大人の足で30分も掛かるかどうか、だとしても。]
あの御屋敷からの脱出では、さぞかしお疲れでしょう。
……お母様に会うのは、少し温まってからにしてはどうです?
御茶をお淹れしますから、さあ。
[丁寧に御辞儀をした彼女に近付いて、膝を付く。視線を合わせるように身を低くして、ふわふわとした髪や羊毛に纏い付いた氷の破片を払ってやった。
アリスが拒まなければ、まるで御伽噺の騎士のように、恭しく手をとって暖かな暖炉の傍の椅子まで案内するだろう。]
(16) 2013/11/20(Wed) 02時半頃