-墓地→村はずれ-
[心なしか降雪の増した寒空の下を、老人は足を速めて村はずれへと向かう。
それでも速度は一般人が歩く程度の早さなのだが、今のバーナバスにはそれが限界だった。]
(―――……ふむ、まずいな…)
[自分の魔力が、予想以上に腹巻きにとられていた。
ドナルドの鱗製の品は、彼の炎で鍛えられている。
込められた魔力が、属性たる熱を発して所持者を助けるだろう。
しかし老人の腹巻きは違う。元々は外套だったこれに編みこまれた髪と術式は、今や老人の魔力を吸ってしか稼働しなかった。
東の果ての国では炎と鍛冶の神とまで言われたその男は、当然ながらもうこの世にはいないからだ。]
今日が限界か…
なんとか夕刻までに滝まで行ければいいんじゃが…
[そうこうするうちに村はずれまで出た。
あとは滝の裏の洞窟まで向かうだけだが…
友人と一時の別れを遂げ、失意にくれる少年の姿が老人の視界に入ったなら、声をかけずにはいられなかっただろう。]
(15) 2013/11/28(Thu) 04時頃