― ??? ―
[これは男が会場へ出かける数十日ほど前の話。
蝋燭の灯りだけで照らされた地下室に男は居た。
暗い部屋を良く見れば飛び散った肉片が散乱しているのが解るだろう。
血とたんぱく質が焼けたにおいに混じり、体液のにおいもある。
男が首を振るに合わせ、後ろで一つに縛った濃い金糸が揺れる]
だから、この間のは壊れたんだって。
いや……中から破裂させてしまって……ああ、そうだよ。
そろそろ新しい玩具がほしいんだ。
良いだろう?
[薄いシャツと黒のスラックスというラフな格好で、男はソファに座っている。
手にした受話器から電話越しに、相手へ甘く絡むようなバスバリトンで囁くのは愛の言葉でなく、金の話]
ニ三匹買えるくらいの金、工面してくれないか。
勿論――何時も通り礼はするからさ。
[薄い唇が歪む。
地下室からは、男の低めのバリトンが暫く会話を続けていた**]
(15) 2010/04/01(Thu) 03時頃