――カリュクス。
嗚呼、良かった……。
[薄らと開けられた瞳に笑みを零して。同じく彼の口元に浮かべられた笑みを見れば、それは深いものになる。
許されるならばそっとその頬に手を当てて、彼からの問いに対しては小さく首を振る。
そうして『会いたかった』と。そう形結ぶその唇を、親指の腹でそっと撫ぜた]
僕も会いたかったよ。
[小さく、けれどはっきりと言葉を返し、くしゃりと顔を歪ませた。……まさか彼から、そんな言葉が聞けるとは思ってもいなかったから。
伸ばされた手を、自分の方から導く様に受け止めて。彼の小さな掌が己の髪に触れれば、微かに息を詰めた。
――彼に触れられるなど、いつぶりだろうか。そんな事を考えれば、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。
けれどそれを表情に出す事はしないまま、どうにか笑みの形を保った。
この気持ちを彼に悟られてはいけないと、そう思ったから]
(14) 明治 2014/07/07(Mon) 01時半頃