[落丁している時は、うつくしく古びた装丁をそっと撫で。
悲嘆の主人公がいる時は、頁を繰りながら小さな声で。
ディーンさま、と語りかけるのです。
こわい動物がでたら、ほれーしょさんに教わって対抗するのです。ひどいウソをつくひとは、お姉さまの羽で擽ってしまいましょう。何処をさすらっていても空には月が宿っているわ。
朝顔は、こわい、悲しいと感じる心を分けてほしかったのでしょう。今なら、そんな風に自分の気持ちを理解できる気がします。
ディーンさまの口から語って頂いて、直接向き合って伝えればよかった。物語の痛苦は和らげられずとも、鈍らせねば耐え難い心に代わって、作者さまが伝えようとする悲嘆を感じたかったと。
遠回し、遠回しの声援は頁越し、拙い声に乗せて物語の男へと送られました。上擦ったり涙が混じったり、うるさい読者でございましたね。
朝顔は、開館時間が来る前にぴゃっと自分の本へ帰るのです。鮮やかな生と微かな死が香る夏のなかへ]
(13) blau 2017/07/20(Thu) 00時半頃