[あげられた呻き声には満足そうに目を細めて。どうにか引き千切る事の出来たらしいピアスをぎゅ、と。握りしめた。
その驚く顔が見られただけで、もう満足してしまいそうだけど――そういうわけにはいかないのだと、むしろここからが重要なのだと、分かっていた]
……ッい゛、づ!
[首を取られ、机へ叩きつけられれば、小さく悲鳴をあげる。
背中を襲った衝撃に目を白黒させながら、喘ぐように息を吐いた。それでも、苦痛に顔を歪めはしても、随分と様子の違う彼を見やる。
笑みの消えた顔は、やはり作り物よりは余程好ましく思えた。否、こういうのを愉快、というのだろうか。久しく感じていなかった感情だけれど、嗚呼、今だけは彼の上に立っているのだと……そういう事を考えて。こんな状況だというのに、涙目になりながらも口角を上げる]
――この傷は消えない、だろうな。
[ぜえぜえと息を吐きながらも、彼の耳元に視線を送ってそんな言葉を吐き出してみせた。
勿論、手にしたピアスを返したりはしない。別にこれ自体はどうでも良いのだけれど、彼のこの反応を見るに、どうやら随分大切なものらしい。であれば、すぐに返す道理は無いだろう]
(9) 製菓 2014/07/07(Mon) 01時頃