―屋台街―
[いつの間にこんなに増えたんだろう。
人の波に溺れ、酔いそうになりながら、少女は道を進む。
ふと目を向けた先には、少し大きな桶のようなものの中を、赤い魚が泳ぎまわっていた。
なんだろう、とまじまじと眺めていると、嬢ちゃん、やってくかい、と尋ねられる。]
ううん、やらない。
お金、持ってないの。
[何をやるんだろう、と眺めていれば、子供が何か妙な形のものを手に、残念そうな声を上げていた。
濡れて破けた和紙がぶら下がっているけれど、何をやっているんだろう。
和紙が濡れれば破けるのは、当たり前だと思うんだけど。]
…きんぎょ、すくい…?
[おかしな話だ。
金魚、という割に、そこに泳ぐのは赤い魚。
これじゃ赤魚ではないだろうか。
じぃ、と見つめる少女の目の先、魚が何かを求めるように口先を水面に出して水面を揺らす。]
(6) 2015/04/18(Sat) 13時半頃