[コツン、コツン。
苛立たし気に出した手紙を叩く指>>1:119に視線を落とし、ひとつ舌を打つ音を聞く。
何を言えども、彼は鼠小僧の存在など信じはしないのだろうと思うから。吐かれた曖昧な返答には、女は困ったように息を吐くばかり。
目の前の薬師の大切なものなど知る由もないし、そもそも女自身の家族に思い入れなどありはしない。
だから薬師が家族の安否を憂いている事など、到底気付ける訳もなく。
――だけれど薬師が口にした、"大切なものは全て海の向こう"だと。
その言葉には、少しだけ密かに親近感を覚えはしたけれど。]
――先生。嫌な事言わんといて下さいな。
……どんな物でも、"忘れる"んはあまり気分良うあらへんのですけどね。
例え昨日の晩御飯の献立だろうと、一方的に盗まれるんは…癪やないですか、ねぇ?
[飛んできた皮肉混じりの言葉>>1:121には、少しだけ拗ねたように口を尖らせ。
続けて何処かぼんやりとした口調で、"そう思いませんか"とでも言いた気に首を傾げる。
自分の物を誰かに奪われるのは気に食わない――それが例え、自分に取っては取るに足らないものだろうと。]
(0) 2015/01/21(Wed) 23時頃