づ、ぅ……っ、
[傷口に食い込む指に、小さく呻く。その痛みに体が引き攣って、制止する事すら出来ない。
呼ばれた名前に彼の方を見れば、その顔に浮かべられた笑みに小さく息を呑んだ。いつもいつも、やっている事とは正反対の顔をする奴だ。とてもじゃないが、理解出来ない。
――嫌だ。この笑顔は、嫌いだ]
ほんとうに……?
[彼の言葉に、思わず確認する様に問いを投げて。
何もしないなどと、そんな言葉を信じる事は出来なかったけれど。でも、今の自分はそれに縋るしか無いのだと気付いて、きつく眉を寄せる。
宥める様に触れてくる手には、欠片の安堵も浮かばなかった。とはいえ、それでも殴られたり嬲られたりするよりは、余程マシだというものだ。
そう考えれば、振り払う事もせずに、諦めた様に受け入れた。
――言い聞かせる様に紡がれた言葉に反発しようにも、言葉が見つからない。確かに彼から逃れる方法は、他には無いのだろう。
それなら最初から従順になっておけば良かったと……そうは思えなかったけれど]
(+48) 2014/07/06(Sun) 11時頃