う、ぐ……、
[漸く嘔吐感も薄れて、シャツの袖で口を拭う。スーツも合わせて、それなりの値の物なのだけど。どちらにしろこれを残しておくつもりは無かったから、遠慮などしなかった。
今日と言う日の痕跡を全て消してしまいたい。そして何事も無かったかの様に過ごせれば、それが一番だ。
――勿論、そんな事は出来ないと分かっているけれど。
ちら、と。こんな状況で桃を食べている彼を盗み見て。よく人が吐いている横で物が食べられるものだと、ある種感心してしまう。
何処までも飄々とした態度にはやはり苛立ったけれど、それだけだ。だから何を出来るわけでもない]
――好かれてると、思える方がおかしい、だろう。
[散々無体をはたらいておいて、なんて。
嘔吐が終われば、無理にいつも通りの悪態をついてみる。……そうしないと、自分を保てなくなりそうだった。
意識していつも通りを装わなければ、心まで屈してしまいそうで。それだけは、絶対に嫌だった。
けれど彼が此方を覗き込んでくれば、さっと顔を青く染めて]
(+24) 2014/07/05(Sat) 22時頃